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2012年1月18日 (水)

タイムマシン

 大工ネタを書いたら男性陣の反応がいいようだ。ついでに想い出ひとつ。
 私の父親がはじめて自宅を建てた小学1年の頃。頼んだベテラン大工のなかに、新入りの見習いひとり。ひょろっと背が高くて、髪がぼさぼさ、見るからに頼りないおニイちゃん。いつも先輩から「なにやってんだ、お前!」「カンナも削れないでどうすんだ!」と怒鳴られ「すみません・・・」と謝っていた。うちの父親も「なんであんなの連れてくるんだ」と文句を言っていた。ただ、彼は小学1年生の私には優しかった。

 そんなニイちゃんがあるとき、つくりかけの台所の床下の柱に鉛筆で何か書いている。
 「おニイちゃん、なに書いてるの?」そう訊ねた小1の私に
 「うん、自分の名前。だってこの家、ボクが初めてつくった家だからね」

 ああそうなんだ。「僕も名前書いていいかな?」と私。
  すると「もちろん。だって君の家だよ」とおニイちゃん。

 2人で柱に名前を書き終えた後、「いつかこの家を壊すとき、サインを見つけた人がビックリするかもね。あの有名人だ!ってさ」
 そうニッコリ笑ったおニイちゃんにつられて私も笑った。2人で顔を見合わせてしばらく笑った。
 ・・・・そのときの彼の笑顔をハッキリと覚えている。とても優しい、子ども好きの笑顔だった。

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 あれから40年以上。
  私は有名人ではないが、年に数人奇特な人からサインを求められるくらいには出世した。
 正直、我ながらあっぱれであり、十分な人生であると思う。

 さて、彼はどこで何をしているのだろう。
 初めてつくった家の柱に自分の名を記したことを覚えていてくれたら、あのときの少年はそれだけで嬉しいのだが。

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